断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

ミラノから成田へ

 九月二日に無事帰国した。八月は丸々ヨーロッパ過ごしだった。さすがに向うでブログ記事を書く余裕はなかったが、メモと記憶を頼りに「日記」形式で旅行中の日々を振りかえってみよう。しかしその前に(順序は前後するが)日本帰国後の印象を記してみたい。
 飛行機はこれといったトラブルもなく、ほぼ定刻通り成田へ到着した。ゲートに降り立ち、建物の壁や床を眺めると「日本」の匂いがぷんぷんする。別に味噌や醤油の匂いがするわけでない。建物のつくりがいかにも「日本人が作ったもの」という感じを与えるのである。
 空港を出て外に立つと、その和やかさに驚いた。ぎすぎすした都会からのどかな里山風景へ戻ったような感覚である。ヨーロッパでは人間どうしが絶えず無意識に角突き合せているようなところがあるが、日本にはそれがない。逆に人と人との間に無言の信頼感が漂っているようにさえ感じられる。誤解のないように言っておくと、これは日本人どうしが「互いに愛と信頼でつながれている」とか、「目に見えない絆によって結ばれている」とかいったことではない。人間と人間のあいだの無意識の警戒感ともいうべきものが、ヨーロッパに比べて圧倒的に低いということである。日本を出る前は、この国の社会には殺伐とした雰囲気が蔓延しているように感じていた。しかしよその国と比べれば、日本はまだまだ「牧歌的」である。この印象は、電車で東京へ降り立ったときも変わらなかった。