断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

2017-01-01から1年間の記事一覧

久々の投句

「りいの」という句誌への久々の投稿。全国大会への投稿を除けばほぼ1年ぶりの投句である。我ながらぎこちない感じだが、まあ仕方がない。 木枯しや焼き芋過ぎぬ訥々と 早梅や貧しき日差し集めをり 木枯しや山の音凄き川向い ふんわりと鳥影過ぎぬ白障子 木…

12月2日、土曜日。

地面から伸びてきた朝顔の蔓が家のベランダにからんでいて、夏の時分は朝ごとに薄い紫色の花を開いていた。秋になって蔓も葉も徐々に茶色にくすんでいったが、温暖な気候のせいか十二月に入ってもまだ緑が残っている。いつ枯れてしまうのだろうと思っていた…

9月1日~2日(ミラノ~成田)

今回のヨーロッパ滞在の最終日だが、午後の便で成田へ戻るので、あまり時間はない。 ホテルに荷物を置いてブレラ美術館へ。ドゥオモ(大聖堂)前の広場から巨大なアーケードを抜けて、別の広場へ出た。ツーリスト・インフォーメーションがあったのでそこで美…

8月31日(ツオーツ~ミラノ その2)

新学期が始まり、忙しさにかまけてしばらくブログをさぼってしまった。旅行記の残りを続けることにします。 ※ ベルニナ峠を越えてすぐの駅、アルプ・グリュムで途中下車をした。駅は高台にあり、目の前に雄大な氷河のパノラマが広がっている。氷河の先端から…

高草山登山記

この夏は色々なところへ行ったが、その中からちょっとマイナーな場所を一つ紹介したい。一か月ほど前に登った焼津の高草山である。標高はそれほどでもないが、海を見下ろすロケーションが素晴らしく、最高の眺望を楽しんできた。今回の記事は(ちょっと横着…

オスカー・ワイルド『獄中記』より

オスカー・ワイルドの『獄中記』からの引用。 わたしは現代の芸術と文化にたいしてもろもろの象徴的な関係に立っている人間だった。すでに壮年期の初めにみずからこのことを悟り、のちに現代にそれを悟らせたのだった。その生涯のあいだにこのような地位を保…

ヒルティとワイルド➂

さて、オスカー・ワイルドが『獄中記』でこんなことを書いている。 人生なるものが方法と手段の注意深い計算による狡猾な投機であるような、もっと機械的な人間なら、どこへ自分が行こうとしているかはいつも知っており、またそこへ行くわけである。かれらは…

ヒルティとワイルド②

私たちは、何とはなしに、幸運や成功によって幸せになれると思っている。だが、ちょっとでも人間や社会を観察してみれば、「幸運」や「成功」がそのまま「幸福」につながるわけではないことはすぐに分かる。逆に成功は、ときに心の幸福を阻害さえする。『幸…

ヒルティとワイルド①

コンビニの書棚を見ると、自己啓発書や健康法、ダイエット、税金対策、サイドビジネスの指南書などと並んで、「開運本」とでも呼ぶべき本が置いてある。友人が「この手の商売はあやしい宗教とスレスレだ」と言っていたが、逆に言うと「あやしい宗教」は、「…

8月31日(ツオーツ~ミラノ その1)

スイスの滞在はこれが最終日。今日中にミラノへ戻り、明日は成田行きの飛行機に乗るので、実質的に旅の最終日でもある。日本へ帰ることを思うと、なぜか子供のように心細い。不安な胸騒ぎのようなものさえする。理由は分からない。おかしなことだが、日本か…

8月30日(ツオーツ その2)

列車に乗ってサン・モリッツへ。トレッキングの予定変更でだいぶ時間が余ったので、イン川の谷の最奥部、シルス湖へ行ってみることにした。途中、ポントレジーナで乗り換えがあり、待ち時間を利用してトイレに入っていたら、ぎりぎりで列車を逃してしまった…

中勘助と羽鳥

静岡市郊外に羽鳥という町がある。静岡駅からバスで20分ほどの距離で、静岡のベッドタウン的存在だが、藁科川沿いの小さな盆地に開けていて、風光明媚な土地である。 実は私自身、以前にちょっとだけ住んだことがあるのだが、引っ越し当日、川のほとりで眺め…

8月30日(ツオーツ その1)

6時半起床。朝食後、短い読書タイム。10時半の列車でディアヴォレッツァ駅へ。ロープウェイで山頂まで行ってトレッキングをするつもりだったが、着いてみると雲が厚いので諦め、二駅戻ってモルテラッチという駅で降りた。ここから峡谷沿いにモルテラッチ氷…

8月29日(チェレリーナ~ツオーツ)

朝5時起床。前日の天気予報で、午後からにわか雨があると聞いていたので、早目に動くことにしていた。 荷物を預けて宿を出発。今朝の空気はさわやかで、ちょっとひんやりするくらいだ。ここへ来るまでずっと続いていた暑さも、昨日の驟雨で洗い流されたよう…

8月28日(バート・ラガーツ~チェレリーナ その2)

ふたたびチェレリーナ駅へ戻り、サン・モリッツ行の列車に乗り込んだ。終点のサン・モリッツまではわずかな所要時間だが、すぐに車掌が検札にやって来た。切符を取り出して見せると、「この切符はどこで買ったのか?」と詰問し始めた。どうやらチェレリーナ…

8月28日(バート・ラガーツ~チェレリーナ その1)

昨夏のヨーロッパの旅行記を中断させてしまっているが、記事自体はあと数日で帰国というところまで来ている。当初は、去年の帰国後にすぐ書き上げてしまうつもりだったのだが、すでに一年(!)が経とうとしている。簡単なメモ書きがあるので、それを頼りに…

私の研究について(その2)

試行錯誤の後、文学から思想・哲学へと研究活動の軸足を移すことにした。ただしこれまでやってきたニーチェをすっぱりと捨ててしまう勇気はなく、ニーチェやフロイトのテクストを分析しつつ、そこから理論的考察を導くという方針でやることにした。この方針…

私の研究について(その1)

「研究者」のブログと銘打っておきながら、研究についての記事がほとんどないことを、不思議に思っていた方も多いのではないかと思う。私自身、一度きちんとした形で自分の仕事を紹介したいと思いつつ、ずっと先延ばしになっていた。夏休みに入って少し余裕…

脳と夏休み

大学の授業は先週ですべて終わり、とりあえず夏休みに入った。「とりあえず」と書いたのは、言うまでもなく研究の方はむしろこれからが本番だからである。 ちょっと前までやっていた小銭稼ぎのバイトを六月末で止め、いまは大学の授業以外は基本的に全部「自…

8月27日(フライブルク~バート・ラガーツ その3)

バーゼルの後は列車でチューリヒへ。今度こそ駅でコインロッカーに荷物を預け、身軽になって駅の外へ。大通りを離れてリマート川沿いの小道に入った。チューリヒには以前、友人たちと車で来たことがあるのだが、その時はドライブで素通りしただけで、街自体…

新幹線が止まったこと(2)

次の日は朝食をとってすぐにチェックアウトした。富士山麓の田貫湖と白糸の滝へ寄り、その足で静岡へ戻るつもりだった。 ホテルを出て駅へ向かった。旅の日の朝にホテルを出るときほど心が浮き立つ瞬間はない。さわやかな朝の大気のそこかしこに、今日という…

新幹線が止まったこと(1)

先週の水曜日(21日)は藝大のほうの仕事で、丸一日東京に出ていた。仕事が終わり、本郷のほうへちょっと寄ってから、軽く食事をして帰途についた。21時30分の「ひかり」で静岡へ戻る予定だったが、少し早目に東京駅に着いたので、13分発の「こだま」に乗り…

8月27日(フライブルク~バート・ラガーツ その2)

切符を買って美術館に入り、荷物をロッカーへ入れた。重い荷物から解放されてようやく一息ついた感じである。旅行中はなるべく身軽に動き回りたいから、極力荷物は減らすようにしているのだが、一ヶ月の長旅ともなればそれなりに荷物がかさばる。今回は駅で…

8月27日(フライブルク~バート・ラガーツ その1)

昨夏の旅行記の続きである。フライブルクをあとにしてスイスにまた五日ほど滞在し、それからミラノ経由で帰国した。今回記すのは、その一日目の行程である。 二週間滞在したフライブルクを出発。バーゼル行の普通列車に乗る。来た時とは逆のルートである。ほ…

近況と雑感(3)

「ある人がどのような種類の人間であるかを知るには、その人の『笑い』を見ればよい。そのさい観察すべきなのは『何を笑うか』ではなく、『どのように笑うか』である。」 誰の言葉だったか失念してしまったが、これは掛け値なしの真実のように思われる。笑い…

写真六枚

今回はちょっと疲れ気味ということで横着させていただいて、最近撮った写真から6枚をアップ。 浜松のフラワーパーク。浜松駅からバスで40分と少々アクセスが悪いが、浜名湖近くの風光明媚なスポットである。 同じく浜松フラワーパークにて。 勤めている東海…

フライブルクにて

夏の旅行記の続きである。以前にも書いたように、フライブルクでの話はエピソード的なものを紹介するにとどめ、先を急ぐことにしたい。 フライブルクに到着した翌日から、さっそく研修が始まった。はじめに与えられた課題は、二人一組のペアで街を歩き、与え…

私の好きな土地

五月になった。写真は自転車でよく行く散歩道の風景である。研究の合間にのんびりと一人歩き、いや一人走りしたりする。落ち込んだりストレスがたまっていたりするときは最高の気分転換になる。 ここへ引っ越してきてすでに何年か経つ。私はこれまでに何度か…

近況と雑感(2)

昨日は東京芸大での授業で、一週間ぶりに上野へ出た。天気予報では静岡は夜から雨だったが、重たい傘を持ち歩くのがイヤで、帰りがけに100円ショップでビニール傘を調達することにした。授業後、大した用事もないのにあちこち歩き回っていたら、終電間際にな…

旅行記のこと

ちょっと前になるが三月の終わりに、友人と伊豆へ日帰り旅行に行ってきた。東伊豆の城ヶ崎海岸、大室山、さくらの里、赤沢温泉などを慌ただしく回った。気心の知れた古い友人ということで、ランチでのビールを皮切りにたえず酒を飲んでいるといった有様だっ…