断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

私の研究について(その1)

 「研究者」のブログと銘打っておきながら、研究についての記事がほとんどないことを、不思議に思っていた方も多いのではないかと思う。私自身、一度きちんとした形で自分の仕事を紹介したいと思いつつ、ずっと先延ばしになっていた。夏休みに入って少し余裕ができたので、今回はこのテーマで書かせていただきたい。
 本来、研究内容の紹介ということなら「私は○○の研究をしています」で事足りるはずである。しかし私の場合、現在の研究スタイルにたどり着くまでそれなりの紆余曲折を経ている。この間の事情を省いてしまうと、「紹介」としては片手落ちになってしまうので、順を追って書いていくことにしたい。
 元々私はドイツ文学を専攻していた。(たとえば修士論文のテーマはホフマンスタールだった。)博士論文はニーチェをやったが、これは彼の主著『ツァラトゥストラ』の語りの構造を分析したものである。その意味でそれは、思想や哲学の研究ではなく、文学研究の延長線上でした仕事である。細かい修正指示などもあって一年後に再提出し、受理された。オンデマンドでの出版や学会での発表などを勧められたが辞退した。自分なりに力を尽くした仕事ではあったが、本来やりたいことは別のところにあるという気持ちだった。