2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧
そんな二人の間に、一つの決定的なドラマがあった。それは秀樹が三高に入学する以前、まだ中学に在学中のことである。もっとも息子のほうは、この決定的な出来事を、はるか後年になって聞き知ったのではあるが。 琢治は元々、息子たちをみな学問の道へ進ませ…
同じ中学四年生のとき、アインシュタインが来日した。神戸から京都を経由して東京へ向かい、各地で講演旅行をしたのち、再び京都へ戻ってきて講演をしたが、「私は聞きに行かなかった。講演がいつ、どこであるかさえ、よく知らなかったのである。」 実をいう…
そんな父のことを、湯川秀樹はこうも記している。 こういう父の生活ぶりは、父が私よりも、はるかに活動的な人間であることを示している。私も近年、しばしば旅行に出るが、たいていはやむなく、という感が深い。人間は自分の置かれた境位のために、どうして…
学者とか研究者とか呼ばれる生き物には二つの種族がある。「ビーバー」タイプと「クモ」タイプである。ビーバーは自然の枝や泥を用いて壮大なダムを構築する。同じように「ビーバー」タイプの研究者は、情報をすすんで蒐集し、それを加工して研究成果を作り…
先日、初めて内村鑑三の『代表的日本人』(鈴木範久訳、岩波文庫)を読んだ。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の生涯を、主に外国人向けに英語で記したものである。五人の生き様は理想化され過ぎているきらいがあり、実際にはもっと多くの内的…