断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

私の好きな小説2(デイヴィッド・ガーネット「狐になった奥様」)

妻が狐に変身してしまった男の話。これは色々な意味でカフカの「変身」と対照的な小説である。 一方は虫に変身した男の疎外と絶望の物語、他方は妻に動物に変身されてしまった男の疎外と愛の物語。 一方は人間性の零度を描いた物語、他方は人間性の限界を超…

私の好きな小説1(北杜夫「こども」)

医者から不妊症を言い渡された男が、他人の精子を使った人工授精を決意する。妻は晴れて妊娠するが、出産直後、あっけなく死んでしまう。残された男は、自分の子でないその子供を、わが手で育てることを余儀なくされる。 子供は成長するにつれて邪悪な本性を…

ついでに言うと

辞書のことを書いた「ついで」に、語学の話題をもう一つ。 年度のはじめに私は、アンケートと称して授業への抱負や要望、質問などを書かせる。趣味や興味関心など個人的なことも書いてもらう。学期はじめだから大した意見が来るわけではないが、中には絵を書…

辞書と私

文科系の研究者がこうした題で作文するとき、辞書と自分の「親しい関係」について語ることが多い。辞書に関するさまざまなうんちくとか、同じ辞書を何十年もぼろぼろになるまで使っているとか、そういう話題である。残念ながら私のはそんな話ではない。学生…