断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

エッセイ

入試シーズンに思うこと(3)

かれこれ10年も前になるが、小林秀雄の「鐔」 というエッセイが、センター試験に出題されたことがあった。ネット上では「並みの書き手ではない」と褒める人がいる一方で、「感情の赴くままに書かれている」、「非論理的で主観的」、「こんなもの出題するな」…

入試シーズンに思うこと

ちょっと前に「東洋経済」の高校国語(古文と漢文)についての記事を読み、それについて少し書いてみようと思っていた。 折しも入試シーズンで、関連したいくつかの記事を読むうちに、俄然、大学受験についてブログ記事に書いてみたくなった。 僕は以前、受…

街の道筋

父が亡くなり、その片付けに実家へ戻ってきた。片付けと言っても、さしあたっては僕自身の荷物を運び出す作業である。電車で横浜の実家に近づくにつれ、気が重くなってきた。 これにはいろいろ理由があるが、一つにはこの家が、僕の十代二十代と分かちがたく…

イタリアへ行きたしと思へども

十二月に入り、今年度も残すところわずかとなった。今年は身の回りに厄介なことが次々と起こって、慌ただしい一年となった。 僕のような、普段はのほほんと生きてる人間も、こういう折にはいろいろと試される。自分自身の欠点や限界もはっきり自覚できた。自…

魚たちがやって来た

気がついたら、ブログの更新をだいぶサボってしまっていた。自分の中で期限なりルールなりを決めておかないと、ずるずると先延ばしになってしまう。気を取り直して一ヶ月ぶりのブログ更新。今回はお魚の話です。 ちょっと前にスクーターバイクが水没した話を…

バイクが水に沈んだこと

昨日は台風が静岡を直撃した。風は大したことないという予報だったので油断していたら、近くの川が一挙に増水し、道路がたちまち冠水した。駐車場にとめてあったスクーターバイクが水に沈み、廃車になった。 僕の住んでいるところは、近くに川があるので用心…

石津浜で遊んだこと

先週の月曜日、最後まで残っていた前期の追試が終わった。成績をつけて教務へ提出、これで夏休み前の仕事は全て完了。追試が終わるとその足で用宗海岸へ行き、海を眺めながら缶ビールを空けた。学期中にも何回か、こうやって仕事後にくつろいだものだが、八…

新しいおもちゃを手に入れた子供

新学期が始まるタイミングでネット銀行の口座を開設しようと思った。ところが手続きの最後、本人確認書類のアップロードのところで、どうしても先へ進めなくなってしまった。よくよく調べたら、スマホの OS( Android)のヴァージョンが古すぎてダメだという…

大学へは船で行こう

三月も残り一週間ほどになった。新学期も間近である。勤めている大学のうち、 東海大学は大きく環境が変わる。まず、清水のキャンパスに人文学部という新しい学部ができた。授業の時間帯も変わった。これまでは全てのコマが午後に入っていたのだが、今年から…

家山梅園再訪

大井川中流域にある家山梅園を訪れた記事を、二年前にアップした。思えばあそこを訪れたのは、 コロナ禍が始まる直前だった。先日、二年ぶりにそこを訪れた。すでに三月に入っていたから(3月12日)あまり期待していなかったけれど、予想外に沢山の花が残っ…

会社を辞めた話

前回の記事で、会社勤めをしていた頃のことを書いた。その続きを少し書いてみようと思う。 年の瀬の慌ただしい時期だったが、人事課に行って会社を辞めたいと申し出た。入社一年目の社員に辞められるのは困ると思ったのだろう。強く引き止められた。すぐにで…

南昌山の夕景

十二月も深まり、もうすぐ冬至である。先日、冷たい冬の夕焼けを眺めていて、盛岡にいた時分のことを思い出した。僕は大学を卒業してしばらく会社勤めをし、一年ほど盛岡に住んでいたのである。 冬のころ勤めていた職場は、西向きの大きな窓があった。当時の…

中野孝次『清貧の思想』

ちょっと前に書いたブログ記事で、中野孝次の『清貧の思想』について触れた。その後この本を再読したので、今回はその感想を書いてみたい。 『清貧の思想』という本は、令和の日本ではどのように受け取られているのだろうか。高度消費社会へのアンチテーゼ、…

大代川逍遥

皆さんの中で、大井川の支流に大代川という川があるのをご存知の方がいるだろうか。もしもいたら、それはよほどの「通」か、さもなくば島田市に住んでいる地元の方であろう。 島田市と掛川市の境をなす山稜から流れ出して、JR東海道線の大井川鉄橋のそばで大…

池大雅と岡潔

前回の記事についていくつか補足的なことを書こうと思っていたけれど、色々と忙しくてかなり日が経ってしまった。このあたりで書いておこうと思います。 池大雅が筆を忘れたまま家を出、それに気付いた奥さんが追いかけていったが、自分の妻だと気づかなかっ…

テント・コシヒカリ・硫黄泉

近所の店で、ツーリング用の小型テントが2000円で売っていた。テントは一つ持っているのだけれど、思わず衝動買いをしてしまった。帰ってきて調べたら、アマゾンなどで3000円程度で売られていた。そんなに軽くはないけれど、自転車で運ぶ分には問題ない。ど…

忘れえぬJK

雨で川の水が溢れて道路が冠水した。 部屋の前の道が褐色の水で渦巻き、今にも床上まで浸水しそうである。部屋の床に放り出してある本を片付けねばならない。いやその前に、自転車置き場の自転車を高い場所へ移さねばならぬ。そう思って焦っていると目が覚め…

同窓会へ行ってきた

「同窓会へ行ってきた」と題したが、本当に行ってきたわけではない。Zoom飲み会に参加したのである。 五年ほど前に高校の同窓会があった。学校に集まって、担任だった先生方にスピーチをしていただき、それからみんなで教室や校舎を見て回った。その後パーテ…

冬は名のみの

北陸が記録的な豪雪に見舞われていた頃、 寒波は静岡も襲っていて、ここ数年ちょっと記憶にないくらいの寒い日が続いていた。最近はようやく寒さも緩んできた。昨日は気温も二十度近くまで上がり、冬は名のみの風の暖かさであった。 久々に山の方まで足を伸…

新春つれづれ

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 去年は(そしてたしか一昨年も)元旦は用宗の温泉で過ごしました。その時は世の中がこんなになろうとは夢にも思っておらず、「今年もまた温泉三昧の日々を送りたい」などと呑気なこと…

年の瀬の早梅

去年はびっくりするような暖冬で、なんとクリスマスの時期に早梅が咲いていた。今年は去年とは打って変わって冬らしい日が続いているが、二日前、去年と同じ樹が開花しているのを見た。咲いているのはこの株だけだったが、それにしてもこの時期に開花とはび…

意見について

ブログの更新をサボっているうちにあっという間に一ヶ月経ってしまった。もはや十二月も半ばを過ぎた。寒さもいよいよ本格化して冬本番である。 それにしても今年は大変な一年だった。新型コロナに関連して、ネットもよく見るようになった。昨日は、北里大学…

夏休み間近

前期の授業もようやくゴールが見えてきた。遠隔授業の準備や対応に明け暮れたセメスターだった。例年だと授業修了後すぐに信州あたりへ行って3、4日過ごすのだが、今年はさすがに行く予定はない。ただでさえ信州は電車では行きづらい。一番早いのは富士か…

近況さまざま(3)

新型コロナの影響で、前期の授業が始まったのは五月の半ば近くだった。いつもの年に比べて一か月遅れである。それまで自宅にいて何もしていなかったのかというと、無論そんなわけではなく、オンライン授業の実施に向けて準備が山積していた。授業が始まって…

近況さまざま(2)

二月の初旬のことだが、盛りの梅の花を見に、浜松のフルーツパークへ行ってきた。広い敷地にさまざまな果樹を植えていて、その一角に観賞用の梅園と、実を取ることを目的とした梅園とがある。観賞用の梅園はさまざまな品種を集めていて、香りをかぎ比べて歩…

近況さまざま(1)

新型コロナで世の中が大変なことになってしまった。生活風景は三か月前とは180度様変わりしてしている。私自身をとっても、大学は全面的にオンライン授業へ移行し、今はその準備に明け暮れている。大好きな旅行にも行っていない。温泉もずっとご無沙汰してし…

岡潔と猫

岡潔の話は前回までで一区切りにしようと思っていたが、もう一つ、表題のテーマで記事を書くことにした。ただしここで、猫をめぐる岡潔の秘話やエピソードを開陳するわけではない。彼自身がエッセイ(「こころ」、角川文庫『風蘭』所収)に書いている内容の…

諸想、群がり起って

新しい記事を書こうと思いつつ、だいぶ間が空いてしまった。今日は冷たい雨が降ったりしたが、昨日は良い天気だった。気温もゆうに二十度を超え、半袖で歩き回れる日和だった。頬をなでる風はまるで五月のそれで、歩いていてぼんやり酔ったような気分になっ…

広中平祐『生きること 学ぶこと』より

もう一つ、広中平祐氏のエッセイ(集英社文庫『生きること 学ぶこと』)に極めて印象深いエピソードが載っているので紹介したい。氏が岡潔に出会ったのは大学院時代であった。二人の年齢差はちょうど三十歳なので、岡潔が五十代半ば頃のことであろう。奈良女…

岡潔「私の受けた道義教育」より

もう一つ、「私の受けた道義教育」(光文社文庫『春宵十話』所収)からの引用。 ところで、私自身どんな道義教育を受けたかふりかえってみよう。私が初めて道義教育を受けたのは数え年五つの時だった。これは祖父から受けたもので、一口にいえば「ひとを先に…