断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

エッセイ

岡潔「春宵十話」より

岡潔の「春宵十話」(光文社文庫『春宵十話』所収)からの引用である。 人は動物だが、単なる動物ではなく、渋柿の台木に甘柿の芽をつぎ木したものといえる。それを、芽なら何でもよい、早く育ちさえすればよいと思って育てているのがいまの教育ではあるまい…

岡潔のエッセイ

二月も残すところ数日となった。この連休は雨のち晴れで、気温もだいぶ高くなった。梅の散るのが早いのは残念だが、春が身近に迫っている。いつもなら心楽しい季節だけれど、今年はそれどころではなくなってしまった。新型コロナウイルスの問題である。 実を…

猫に会った話(5)

ちょっと間が空いてしまったけれど、前々回の記事の続きである。 ずっと鳴かなかったその猫が、ひとたび鳴いたことで一気に私との距離が縮まったかというと、そうでもなかった。もう一匹が私にべったりの状態なので、何となく遠慮して近づかないでいる感じだ…

猫に会った話(4)

ちょっと間があいてしまったが、前々回の記事の続きである。 ずっと鳴かなかった猫が、ある出来事をきっかけに初めて鳴いたというところまで書いた。その猫はすでに避妊手術をしてあった。たぶん誰かが、家で飼えなくなったのを捨てていったのだろう。あるい…

謹賀新年

謹賀新年。本年もよろしくお願い申し上げます。 毎年元旦はどこかへ出かけることにしているのですが、初詣に行く習慣はないので、今年も温泉へ行ってきました。場所は去年と同じ「用宗みなと温泉」です。用宗は漁港で有名な町で、静岡から電車で二駅、わずか…

猫に会った話(3)

年内の授業は先週で終わった。一年前、正月に早咲きの梅が咲いているのを見てびっくりしたことがあったが、今年は去年以上の暖冬で、12月に入ってからも、昼間は半袖で過ごせるような日が何度かあった。ひょっとしたら今年は年内に梅が見られるかもしれない…

吾輩は虎である

脱線ついでに別の話題をもう一つ。一週間ほど前にネットで見たニュースだが、南米アルゼンチンで二匹の子猫が拾われたという。そのうち一匹は弱っていて生き残れなかったが、もう一匹は無事育ち、二か月たって獣医の健康診断へ連れて行った。ところが獣医は…

猫に会った話(2)

「猫派」か「犬派」かと訊かれれば、当然私は猫派ということになるのだろうが、一口に猫派といっても猫との付き合い方は色々である。単に猫を眺めているのが好きだという人もいれば、一緒に遊ぶのが好きという人もある。中には野生の猫が狩りをしているのを…

猫に会った話(1)

後期の授業が始まってあっという間に一ヶ月が過ぎてしまった。今日は大学の学園祭のために全休。すでに11月だが、静岡は晴れて気温が25度まで上がるそうで、家にいるのはもったいないくらいの陽気である。 ちょっと前になるが、生まれてはじめて猫カフェへ行…

セネカとニーチェ

話はちょっと前後するが、以前に書いたセネカの記事の続き。 大衆でいっぱいの中央広場、皆が集まってごった返す囲い場、それにあの競技場[…]そこには、人間の数と同じだけ悪徳がある。そうした連中のあいだには「…」平和は存在しない。お互い同士、わずかな…

セネカと衝動買い

昨日で芸大の前期の授業は終了。それよりちょっと前のことになるが、久々に神保町の古書店街を訪れた。最近は古本はもっぱらネットで買うようになっているから、神保町を訪れるのも少なくなってしまった。だが仮にお目当ての本がなくても、古本屋巡りは楽し…

上野動物園再訪記

前々から上野動物園を再訪したいと思っていたが、なかなかできずにいた。昼間で時間が取れるのは授業前の時間帯だが、この時間は美術館で暇をつぶすことが多い。西洋美術館や国立博物館の常設展は「キャンパスメンバーズ」の制度を使って無料で入れるから、…

温泉で風邪退治

忙しさにかまけてブログ記事の投稿をさぼってしまった。前回の記事からすでに一ヶ月が過ぎている。 先週末は風邪でダウンしていた。大学の授業も休んでしまった。耳鼻科へ行って薬をもらい、家でひたすら眠っていた。 週明けの月曜日、多少不安を残したまま…

改元雑感

連休中はやるべきことが山積していたが、あまりはかどらないまま迎えた昨日、藤枝市の蓮華寺池公園に足を運んできた。折しも藤の季節で「藤まつり」が開催されていたが、肝心の藤の花はすでにほとんど散っていた。 公園の一角には藤枝市の「郷土博物館」があ…

雨の中の桜

山桜というものは、必ず葉と花が一緒に出るのです。諸君はこのごろ染井吉野という種類の桜しか見ていないから、桜は花が先に咲いて、あとから緑の葉っぱが出ると思っているでしょう。あれは桜でも一番低級な桜なのです。今日の日本の桜の八十パーセントは染…

鬼と泥棒

先日、芸大の檜山先生の退任記念レクチャーがあった。長年お世話になった先生が、平成の最後というタイミングで退官するのはちょっと感慨深い。そのレクチャーとパーティーに出るために久々に上野へ出たが、途中で伊豆の温泉へ立ち寄ってきた。 私は実家に戻…

梅園さまざま

正月明けから目が回るほど忙しい日が続いていたけれど、それも三日ほど前に一段落。髪が伸びてぼさぼさになってしまったので、昨日は床屋へ行ってきた。部屋もまだ散らかり放題である。 時間的に前後するけれど一昨日、久々に浜松の「フルーツパーク」という…

2018年度の授業終了

先週で今年度の授業(とテスト)がすべて終わった。採点作業が残っているので、まだ完全に解放されたわけではないが、ともあれほっと一息である。 話は前後するけれど先週水曜の明け方、あまりの寒さに目を覚ましてしまった。この日は芸大の授業があるので、…

早梅のお正月

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 ※ 大晦日の晩は蕎麦ならぬパスタで年越しをし、明くる元旦は午前中はケーキを食べながら読書、午後からは「用宗みなと温泉」という日帰り温泉へ出かけてきた。ここは昨年末の12月22日…

何もない近況報告

先週末で年内の授業は終了した。その後すぐクリスマスだったが、残念ながら今年は一緒に過ごす相手がいない。一人で家にいるのも悲しいので(笑)、島田にある温泉へ行って半日を過ごしてきた。「田代の郷温泉・伊太和里の湯」というところで、山の上にある…

夏休み終了間近

二か月足らずあった夏休みもあっという間に過ぎた。来週からまた新学期が始まる。この夏は信州白馬へ旅行したりもしたが、体調を崩して寝込むということもあって、いつになく慌ただしかった気がする。 寝込んでいる最中、今までに訪れた温泉地を頭の中で数え…

卒業する学生に本を勧めるとしたら?

前回の記事の付け足しである。 私は『ガリヴァー旅行記』のスウィフトが、総体としての人間批判を行ったと書いた。実際に読んでいただければお分かりになるが、スウィフトは、人間性にひそむ底なしのエゴイズムや貪欲、虚偽、卑劣、攻撃性といったものを、ヤ…

新入生に本を勧めるとしたら?

昔、社会人二年生の後輩と飲んでいてこんな話を聞いた。彼ら二年生が、新入社員に本を一冊すすめるよう言われたというのである。年齢的に一番近いということもあったのだろうが、思うにこれは、彼ら二年生自身の「自己研修」だったのだろう。誰かにものを教…

写真の追加

追加の写真です。「お座り」を仕込まれたご近所のペットさんです。(ウソですよ。)

前期の授業終了

先週の木曜日、8月2日に前期の授業が終了した。採点などの作業もほぼ終わり、夏休みに「突入」である。気がついたらブログのほうも、二か月以上更新していない。気にはかかりながら、ずるずるとサボってしまった。書こうと思っていた記事もいくつかあるので…

旅人と旅好き~湯川秀樹の自伝『旅人』(6)

兄弟たちが揃いも揃って優秀ということもあったのだろう。(長兄芳樹は冶金学者で東大教授。次兄貝塚茂樹は東洋史学者で京大教授。弟の環樹は中国文学者で京大教授。)が、それにしても秀樹が在籍した京都一中は当時の超エリート校で、彼の同級生にも、後に…

旅人と旅好き~湯川秀樹の自伝『旅人』(5)

ある日の夕方、研究室を出た琢治が銀杏並木を抜けて歩いてゆくと、ふいに後ろから声をかけられた。秀樹の中学の校長をやっている森外三郎だった。ふと或る考えが彼の心にひらめいた。この校長に相談してみるのが一番よいかもしれないと。 「あなたは、僕の三…

ブログ名の変更

新年度を機にブログ名を変更しました。検索の便宜上、しばらくは旧名を併記します。よろしくお願いいたします。

旅人と旅好き―湯川秀樹の自伝『旅人』(4)

そんな二人の間に、一つの決定的なドラマがあった。それは秀樹が三高に入学する以前、まだ中学に在学中のことである。もっとも息子のほうは、この決定的な出来事を、はるか後年になって聞き知ったのではあるが。 琢治は元々、息子たちをみな学問の道へ進ませ…

旅人と旅好き―湯川秀樹の自伝『旅人』(3)

同じ中学四年生のとき、アインシュタインが来日した。神戸から京都を経由して東京へ向かい、各地で講演旅行をしたのち、再び京都へ戻ってきて講演をしたが、「私は聞きに行かなかった。講演がいつ、どこであるかさえ、よく知らなかったのである。」 実をいう…