断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

猫に会った話(1)

 後期の授業が始まってあっという間に一ヶ月が過ぎてしまった。今日は大学の学園祭のために全休。すでに11月だが、静岡は晴れて気温が25度まで上がるそうで、家にいるのはもったいないくらいの陽気である。
 ちょっと前になるが、生まれてはじめて猫カフェへ行ってきた。これまで行きたいと思ったことは何度かあったのだが、なんだかんだで行かずじまいだった。今回も計画的に訪れたのではなく、たまたま街でガラスの向こうに沢山の猫たちがいるのを見かけて、ふらふらと吸い込まれるように入ってしまったのである。
 とはいえ、店へ入るのに何のためらいもなかったわけではない。ガラス越しに店の中に見えるのは、カップルや女子のグループばかりである。大の男が一人で足を踏み入れるのはちょっと勇気が要る。しかしそんなものは、冷たい水に飛び込む前の躊躇のようなもので、いったん飛び込んでしまえば全然平気になる。店に入ってからは周囲の視線など一切お構いなく、並み居る猫どもに片っ端から声をかけ、ひたすら撫でまくって楽しんできた。
 私は猫を手なずけることに関してはちょっとばかり自信があって、蛇遣いならぬ「猫遣い」という仕事があれば一度やってみたいと思っているくらいだが、しかしさすがに30分やそこらでは仲良くなれるはずもない。猫を飼っている家へ小さな子供がやって来ると、何かとちょっかいを出したがるものだが、そんなとき猫は、あからさまに拒絶するわけにもいかず、かといってもちろん嬉しいはずもなく、いわば渋々ながら子供に付き合ってやる。猫カフェの猫たちも同じで、無遠慮な私の態度に、いささか迷惑そうな様子で付き合ってくれただけであった。