断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

テント・コシヒカリ・硫黄泉

 近所の店で、ツーリング用の小型テントが2000円で売っていた。テントは一つ持っているのだけれど、思わず衝動買いをしてしまった。帰ってきて調べたら、アマゾンなどで3000円程度で売られていた。そんなに軽くはないけれど、自転車で運ぶ分には問題ない。どこかの川原で水の音を聞きながら、のんびり本を読むのに良いもしれない。
  最近はメスティン(小型の飯盒)でご飯を炊いたりしている。コロナ禍で自炊することが多くなったが、ただ作るだけではつまらないから、アウトドア用品を使って遊んでいるのである。お米もササニシキとかきらら397とか、普段あまり食べないものを試してみたりしている。数ヶ月前にコシヒカリの新米を買ってきたところ、中にカビや変色した米が混じっていた。どうやら古米を混ぜたものをつかまされたらしい。 
 米はずっとスーパーで買っていたのだが、そういえば配達という手があったことに気づき、色々と調べてみた。すると信州の山奥で米を作っている農家と直接契約しているお店があるのを知った。早速電話をしたところ、その山奥のコシヒカリは、魚沼産の一級品と比べても遜色ない味とのことだった。そこまで言われたら、買わないという手はないではないか。早速注文して家へ運んでもらった。
  メスティンで研ぎはじめた途端、これはいい米だなと思った。うまく説明できないけれど、水に入れた途端に自然の「気」が、ぱっと目の前に広がるようなのである。この感覚は二回目に研いだ時もあったから、僕の妄想や思い込みではないはずだ。(ただし三回目以降は、慣れてしまったせいか、あまり感じなくなった。)実際に炊き上がったお米もとても美味しかった。食べ終わった後に、甘さがいつまでも口の中に残る感じだった。
 最近はお米に限らず、何かと面白い食材を買うようになった。ヒマラヤ岩塩というのをご存知だろうか。スーパーなどでも売っているピンク色のきれいな塩である。ちょっと前からこれを使用しているのだが、ある時、ネットで安いものはないかと探してみた。するとヒマラヤ岩塩には、ピンクソルトとブラックソルトとがあり、ブラックの方は溶かすと硫黄の匂いがするという耳寄りな情報を手に入れた。
 コロナで温泉へ行けなくなって、泣く泣く自宅の浴槽に身を沈めている日々だが、市販の入浴剤はどれもしっくりこない。温泉地で売っている「湯の華」も今まで使って満足したことはなかった。ブラックソルトを使えば自宅で硫黄泉の気分を楽しめるのではないだろうか。そう思って注文し、ついでに湯の華も取り寄せて一緒に混ぜて使うことにした。
 届いた品を見てみると、塩というよりは園芸用の砂利のようである。あるいは溶岩(火山岩)を砕いたもののようであった。小さじ一杯ほどお湯に溶かしたところ、確かに硫黄の匂いがした。試しに飲んだら温泉そっくりの味である!さっそく風呂桶にお湯を張ったが、コップに小さじ一杯が必要ならば、一回の入浴で2kgの塩が必要ということになる。さすがにそんな使い方はできないので、普通の粗塩と混ぜて使うことにした。
 湯に浸かると鼻先に硫黄の臭いが広がった。湯の華が程よい濁りを作って、温泉気分を醸し出してくれる。目をつぶり、昔訪れた山奥の湯をあれこれ想像しようとした。しかし瞼の裏には、なぜかスーパー銭湯の内湯のようなものばかり浮かんでくるのであった。