断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

私の研究について(その2)

 試行錯誤の後、文学から思想・哲学へと研究活動の軸足を移すことにした。ただしこれまでやってきたニーチェをすっぱりと捨ててしまう勇気はなく、ニーチェフロイトのテクストを分析しつつ、そこから理論的考察を導くという方針でやることにした。この方針で何本か論文を書いたが、他人のテクストを解釈しつつ新たな理論を導くというのは「余計な迂路」をたどっているように思えてならなかった。
 再度方針を転換し、理論的なテーマを直接扱うという方向で研究を進めることにした。ただしいきなり自分の理論を構築してゆくのではなく(さすがにそれは蛮勇というものである)、過去の哲学者との対話を通して、新たな理論構築を目指すというものだった。たとえば私が「自我」について考察をするとしよう。その際、カントやフィヒテのテクストを論じるにしても、彼らのテクストの解釈自体が研究の「ゴール」ではない。目指すのはあくまでも「自我についての理論的考察」のほうなのである。
 しかしそうしたやり方にも満足できず、けっきょく自分自身で一から理論を構築するということにした。むろん過去の哲学的遺産をまるっきり無視して議論を進めるなどというのではなく、そうしたものを踏まえての理論構築ではあるが。