断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

自転車が壊れた話(2)

 前回の記事を書きかけにしたまま、ブログの更新を先延ばしにしてしまった。忘れていたわけではなく、何となく気が進まなかっただけである。すると先日、手痛い「しっぺ返し」を受けてしまった。自転車で道を横断しようとした際に、縁石をよけそこなって転倒したのである。とっさに柔道の受け身の姿勢を取ることができたので、指にかすり傷を負っただけで済んだのだが。
 さて、これがなぜ「しっぺ返し」なのかというと、さぼっていたブログ記事の続きが、まさに自転車の転倒事故に関するものだったからである。かれこれ二年ほど前、今住んでいる部屋へ移ってきて間もないころのことである。引っ越し後の部屋の整理のため、備品の買い出しに奔走していた。事故はその最中に起こった。その日も同じように自転車で道を横断し、とある店の駐車場に入ったのだが、その途端、下から突き上げられるような感覚とともに体を投げ出された。乗っていたクロスバイクの前輪が外れてしまったのである。一瞬、何が起こったのか分からなかった。分かったときには時すでに遅しで、頭から派手に地面へ突っ込んでいた。頬骨から頭蓋を激しく打ちつけてしまった。終わったなと思った。意識は朦朧としていたけれど、ひどい打ち方をしたという自覚だけははっきりとあった。
 そばを通りかかった女性が119番に通報してくれた。すぐに救急車が駆け付けた。そのまま車の中へ運び込まれ、簡単な聴取と検査ののちに市立病院の救急センターへ向かった。
 病院に入ってまずしたのは傷口の洗浄である。痛む傷口を水で洗うのはイヤなものだが、意識が薄れていたのと、体中に疼痛が広がっていたせいで、傷口を洗われても一向に平気だった。洗われているのが自分の体だという自覚さえ、あまりないくらいだった。
 洗浄が済むと傷の応急処置に入った。頬骨の上の皮膚がベロンと剥がれていたので、看護士に「これ、切っちゃいますか?それともかぶせておきますか?」と尋ねられた。自分では判断がつかなかったので、「傷跡が残りにくい方にしてください。」と答えた。彼女はちょっと考えてから、皮膚を元の箇所にかぶせる処置をした。その後、頭部のCTスキャンをしたはずなのだが、どうもその間のことは記憶に残っていない。覚えているのはベッドの上で医師から「頭部は異常ありませんよ」と言われてほっとしたことだけである。