断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

温泉今昔 1、那須元湯

 ここは数百年の歴史のある古い共同湯で、建物の梁や柱から歴史の匂いがぷんぷん漂ってくる。私が行ったの五月の連休中で、かなり混んでいた。小さめの浴槽がたくさん並んでいたので、その中から比較的空いているのを選び、勢いよくザブンと入ろうとすると、「やめろ!」と悲鳴に近い声があがった。先客の老人がものすごい形相でにらんでいる。近くにいた別の客がやってきた。「この湯は50度もあるんだ。入るときはゆっくり入らないといけない。でないとお湯がかきまぜられて、中につかっていた人が火傷しちゃう。それに、いきなり熱い湯じゃ入れっこないよ。湯船に温度表示がついてるだろう。順々にぬるいお湯から入っていくんだ。」なるほど、浴槽ごとにそれぞれ湯温が書かれている。湯船がたくさんあったのはそのためだったのである。言われたとおりにぬるい浴槽から入っていき、最後は50度のお湯にチャレンジしたが、三十秒と入っていられずにたちまち飛び出した。