断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

俳句近作(2016年2月)

 久々の記事投稿になってしまった。この間、冬学期の期末試験も終わり、何度かまとまった記事を書こうともしたのだが、研究にかまけている内に、ブログのほうはサボってしまった。リハビリを兼ねて、俳句の近作からアップすることにしよう。

冬ざれの山陰照らすお茶の花
小雲とけ去年の小春の音したり
音もなき十一月の朝かな
寒雷や遠州灘の暮れの浪
寒暁の富士斎戒のごときなり
黄ばかりの茶の花ぬらす時雨かな
冬がすみ猫の声音もくぐもりて
冬山路日だまりごとや小休止
ほのかにて初雪溶かす日差しかな
山もとの常葉涼しき初春かな
石屋根の木曽路の冬の茜かな
赤々と漁家二つ三つ雪の暮
こがらしや尿する犬もよろめきて
初雪の香ばかり白き暮山路
早梅や猫もそぞろの塀歩き

 遠州のからっ風は有名だが、同じ静岡県でも静岡市浜松市では冬の平均風速が倍くらい違うそうである。私の住んでいる町は静岡市に近いが、それでも冬は相当に風が強い。冬型の強い折には、吹き抜けた季節風遠州灘で積乱雲を形成し、平地でも風花が舞う。寒い夕暮れどきに、黒々とした積乱雲が巨大な山塊のように沖にわだかまる様子は壮観で、私がこの地に住み始めて目にした景色のうちで、最も印象的なもののひとつである。しかし打ち明けて言うと「寒雷」は私の想像で、実際に耳にしたわけではない。ちなみに「漁家二つ三つ」や「尿する犬」などの句も想像上の句である。