断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

俳句近作(2016年5月)

土黒く張りはじめたる睦月かな

野仏のぬくみきらぬや二月尽

しづかさや梅花のにじむ寺の土

鳥曇り信濃の川もはてしなき

春夕焼雲いぶし銀のごときなり

草の芽の匂いする夜や山泊り

百千鳥こゑに水あり光あり

繚乱の花めぐりせりめをと蝶

春愁や猫もとろりとエサねだり

湯の宿の暮れあかあかと弥生尽

蓮植うる空水のごと澄みゐたり


 一年ほど前の記事で「月十句、年間百句」という目標を掲げた。一年たった今、目標は全然達成できていないが、それでもつごう四十数句は書いた。投句のほうも昨年の12月からはほぼ毎月している。あの記事の「効果」は一定程度あったわけである。
 今回の句について一言。すでにお気づきの方も多いと思うが、「しづかさや梅花のにじむ寺の土」の「本歌」は、芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」である。