断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

美術

今日の一枚(11)

珍しいトンボを見かけました。たぶん新種だと思います(思いません😁 )

池大雅のこと

先日、ビールの空き缶がかなりたまってきたので、ポリ袋に入れて近所のホームセンターへ持って行った。空き缶を回収するコンテナへ、袋を逆さまにしてジャラジャラと缶を流し込みながら、 ふとこんなエピソードを思い出した。 池大雅とその妻玉瀾のところへ…

二百十日、そして二十日

安倍政権がやっと終わろうとしている。前代未聞の恥ずべき政治光景が七年半、白昼堂々くり広げられててきたが。辞任表明後の世論調査では支持率が6割、「良い政権だった」とする意見が7割であった。私は自分の住んでいるこの日本という国が、どうもよく分…

熊谷守一の「あぢさい」

静岡県立美術館で開催されている「熊谷守一 いのちを見つめて」展を見てきた。熊谷守一は私の好きな画家の一人だが、まとまった量の作品を見るのはほぼ一年ぶりである。東京美術学校在学当時から最晩年の作品まで、さらには書や日本画、スケッチ、遺品なども…

だから私は猫が好き

八日の水曜日は東京芸大の授業日だった。予定より少し早く上野駅に着いたので、どこかで時間をつぶそうとうろついていると、「藝大の猫展」というポスターが……。 藝大アートプラザに猫が勢揃いします。 絵画あり、彫刻あり、工芸、建築、映像、写真に音楽ま…

「レトロ」な茶の間風景

「昭和レトロ家電展」の一角には「昭和の茶の間」が再現されていた。昭和30年~40年代の様子を再現したものだという。たしかに小物類は時代がついたものを並べているが、部屋の雰囲気そのものは、案外今でもあちこちの家庭に残っているのではないだろうか。 …

空へ向かって開かれた庭 ― 吐月峰紫屋寺

吐月峰紫屋寺は東海道丸子の泉ヶ谷というところにある。1504年の創建だから、建てられてすでに五百年以上が経っている。もっともはじめは、連歌師宗長が結んだ小さな庵に過ぎなかった。この草庵が、のちに今川氏親の援助もあって、庭園で有名な現在の紫屋寺…

顔真卿展

上野の国立博物館で開催されている「顔真卿展」を観てきた。平成館の広い二つの展示室を使っていて、むろん顔真卿一人ですべての展示場を埋められるはずはなく、篆書から隷書、そして楷書へといたる書体の変遷、王義之から初唐の三大家(虞世南、欧陽詢、褚…

池大雅と「精神」

先週の水曜日は東京芸大の授業の初日だった。久々に上野へ出たが、ちょっと早めに着いたので、東京国立博物館の常設展へ寄った。 本館の二階は縄文時代から江戸時代まで、時代順に日本美術の流れを概観できる仕組みとなっている。玉石混交の展示だが、保存の…

池大雅瞥見(「西湖春景・銭塘観潮図屏風」)

さる一月二十五日、東京国立博物館の常設展示を見てきたが、池大雅の作品で大きなものが二つ出ていた。「楼閣山水図屏風」と「西湖春景・銭塘観潮図屏風」である。 「楼閣山水図屏風」は国宝で、展示解説でも「ベストオブ大雅」などと持ち上げられていたが、…

俳句近作(2016年5月)

土黒く張りはじめたる睦月かな 野仏のぬくみきらぬや二月尽 しづかさや梅花のにじむ寺の土 鳥曇り信濃の川もはてしなき 春夕焼雲いぶし銀のごときなり 草の芽の匂いする夜や山泊り 百千鳥こゑに水あり光あり 繚乱の花めぐりせりめをと蝶 春愁や猫もとろりと…

プレ夏休み(東京国立博物館「和様の書」展)

前期の授業が終わった。二ヶ月間の夏休みの始まりである。研究者は一種の個人事業主で、授業は「オフ」でも本当の意味での「休み」とはいえないのだが、それでも二ヶ月間、自分だけの自由な時間が得られるのはありがたい。 ところで大学のセメスターは、学校…

清水現代アート研究会(2)(ダリの『記憶の固執』)

『記憶の固執』はいうまでもなくダリの代表作で、あのぐにゃりと曲がった時計が、不思議に静謐な海辺の光景に配されている絵である。この作品のテーマが「時間」であるのは明らかだが、実はこうした言い方はかなり曖昧である。またここでは時間の「流れ」は…

清水現代アート研究会(1)

静鉄の狐ヶ崎駅にある「スノドカフェ」(正式名:オルタナティブスペース・スノドカフェ)で、月に一回、現代美術をテーマにした会(清水現代アート研究会 http://www.sndcafe.net/monthly/sgak.html)を開いている。ここは現代美術以外にも、演劇や音楽など…

「青山杉雨の眼と書」展(東京国立博物館)

上野の国立博物館で開かれていた「青山杉雨の眼と書」展を観てきた。杉雨は「昭和から平成にかけて書壇に一時代を画した書家」(パンフレットによる)で、篆隷における個性的な仕事で名高い。 私のような素人は、たとえば書の展示会などで書かれている文字が…

ボストン美術館展(東京国立博物館)

ちょっと前になるが、上野の東京国立博物館で開催されている「ボストン美術館展」に出かけてきた。この手の企画展(○○美術館展のたぐい)のご多分にもれず、総花的でいまひとつ焦点のはっきりしない展覧会だったが、さすがに見どころのある作品も混じってい…

「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展

静岡市美術館でやっている「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展に行ってきた。平日の朝一番ということもあり、館内はがらがらで、おかげでゆったりと回ることができた。これは地方に住んでいることの役得みたいなものであろう。東京では絶対にこうは行か…

パウル・クレー/おわらないアトリエ(東京国立近代美術館)

一人の画家を特集した展覧会は美術展の醍醐味である。しかしその楽しみ方は画家によって異なる。たとえばマティスやシャガールのような一個の明確な画風をもっている画家と、クレーのように無数の様式を試みた画家とでは、おのずと別種のものとなるのである…

「カンディンスキーと青騎士」展

アンフォルメル展に関連してなのだが、今年の一月、丸の内の三菱美術館でやっていた「カンディンスキーと青騎士展」を見たので、そのことを書きたい。 「青騎士展」と銘打ってはいたものの、実質はほとんどカンディンスキー展で、習作時代から印象画風の過渡…

アンフォルメル展(ブリヂストン美術館)

京橋のブリヂストン美術館で開かれている「アンフォルメルとは何か」展を見てきた。 美術史におけるアンフォルメルとは、第二次大戦後まもなくフランスで興った絵画運動で、同時期のアメリカの抽象表現主義とならんで、俗に「熱い抽象」などと呼ばれている。…