断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

俳句近作

 今回は久々に自作の俳句から、比較的出来のよいものを択んで記事にしたい。

 片陰の濃きばかり見ゆ場末道

「片陰」とは夏の季語で、日差しの高さゆえに短く落ちる陰をいう。人通りのない場末道の、真夏の昼下がりの虚無感。

 ひつじ田に陽をなみなみと小春かな

ひつじ田」の「ひつじ」とは、田を刈り取った後に残った株から再生した稲のこと。こちら(静岡)では稲刈り後も晩秋まで長く暖かい気候が続くので、青々としたひつじ田があちこちに見られる。

 早苗待つ里山道へ下り来たり

「五月まつ……」という古歌を思い起こされる方が多いと思うが、実際の本歌は「碓氷嶺の南面となりにけり下りつつ思ふ春の深きを」という白秋の歌。造りは単純だが、暗い山道から田植前の明るい風景の中へ下りてきた爽快感が、一句の流露感とマッチしているように思えて個人的に気に入っている。