断想さまざま

山村浩(哲学・大学非常勤講師・藤枝市在住・宇久村宏=ペンネーム)の日々の断想です。

相良梅園探訪紀

 ここのところ毎年のように暖冬だったが、 今年は冬らしい寒さが続いた。一昨年そして昨年と、クリスマス前に早梅が咲いてるのを見て驚いたが、その同じ梅も、今年は二週間くらい遅く花を開いた。十二月中はさほど寒い日はなかったのに、開花が大幅に遅れたのは、樹が寒い冬の到来を「予知」していたからであろう。 他の梅も事情はほぼ同じで、今年は二週間くらい花が遅い感じである。 三月に入ってもまだまだ花が残っている。
 昨年、相良梅林という所へ行こうと思いつつ、花期を逃してしまった。今年は授業が終わってからもずっと忙しい日が続いていたが、先日やっと仕事が一段落し、その相良梅園へ出かけてきた。
 地図を見ると海のすぐそばにある。駿河湾を見下ろす見晴らしの良い園地を想像したが、実際は全然違った。距離的には海の近くだけど、ちょっと奥まった山間、風のない静かな場所にあった。車の音はしない。音楽を流すスピーカーもない。日当たりもよく、梅園の立地条件として最高である。今まで見てきた梅園の中でも屈指といってよい。谷底に小川が流れていて、耳を澄ますとせせらぎがかすかに聞こえてくるような別天地だった。
 欠点といえば、規模がそれほど大きくないことと、梅の品種が限られていることであろう。緑顎という個人的に好きな品種は、残念ながら小さな苗木の他に見当たらなかった。しかし香りの高い白梅をふんだんに植えていて、何度園内を往復しても飽き足りない気持ちだった。
 梅園を後にし、入り口の脇にある坂道を上って、園地を見下ろせる場所に座った。用意してきたアルコールストーブを取り出し、湯を沸かしてチャーイを飲んだ。眼下の谷間には紅白の梅が、柔らかい和毛のようにわだかまっている。ときどき風が立ち、香りがかすかに鼻孔をくすぐった。 


行きは山側から下りていくルートを取った。写真は牧之原台地の末端にある茶園。



相良梅園の眺め



同じく相良梅園の眺め



チャーイを飲みながら眺めた梅園の全景



帰りは海側へ出た。夏には海水浴客で賑わう静波海岸。シーズンオフなので人はほとんどいなかった。